製品導入事例/バックナンバー
第57回は、関西屈指のブランドエリア・兵庫県西宮市にある「ネット不動産」様です。
古くは、山手を中心に関西富裕層の別荘地としても栄えた西宮市。
現在でも多くの高級住宅地を擁し、芦屋市や宝塚市などと並んで「阪神間エリア」と呼ばれ、羨望を集めている街です。
それだけに、不動産屋さんにとっては激戦区になるのも必然。
そんな厳しい環境の中、社長の古賀様がこだわるのは「ネット特化」、そして「お客様に対して正直であること」。しかもその正直さ、並ではないようです。
飾らない人柄が好印象な、 ネット不動産・古賀社長
公式サイト | http://www.net2103.jp/ |
---|---|
所在地 |
JR東海道本線(神戸線)さくら夙川駅
阪急神戸線夙川駅
阪神本線香櫨園駅より 各徒歩6分 地図はこちら |
取材日 | 2010年11月18日 |
不満を口にしないことです。いかに苦しい状況に置かれたとしても、それはすべて自分の行動が招いた結果。人のせい、社会のせいにしないよう心がけています。
残念ながら、不動産業界には「いかにお客様を都合良く誘導するか」、つまりどうやって「買わせるか」という考え方が根強く残っています。騙すとまでは言いませんが、フェアじゃないですよね。それに不満を持ったからです。
以前はスノーボードが好きだったんですが、怪我をして、仕事に長期の穴をあけてしまって。それに懲りてやめてしまいました。今は、スーパー銭湯めぐりがささやかな楽しみになっていますね。
西宮市・芦屋市が商圏とのことですが、それぞれどんな街ですか?
やはり高級住宅地としてのイメージが強いですね。関西を拠点とする多くの著名人や財界人の方も多く住んでいます。 芦屋に比べると西宮はやや敷居が低いですが、それでもやはり「住みたい街」として非常に人気が高いです。
なぜそこまで人気になったのでしょう?
六甲山系の麓に位置しており、そこから流れ出す澄んだ川、穏やかな海など、今なお自然がとても豊かな地域なんです。それでいて、大阪・神戸など大都市の中間点に位置する。それが着目され、大正~昭和初期の鉄道沿線開発に伴って、宅地整備がなされました。その際に、関西の富裕層を呼び込んだのが始まりです。
2007年に新開業した、JRさくら夙川駅。 駅員が全員女性の駅としても話題
西宮のシンボルのひとつ、夙川。 春には満開の桜が咲き誇る名所だ
まず第一印象として、とても不動産屋さんには見えず、驚きました。
そうでしょうね。物件チラシなども貼り出していませんし。
実際、紙媒体のものは一切ありません。お客様に物件情報をお見せする際も、すべてパソコン上の画面で行います。お店というより、オフィスの応接室に見えるかもしれませんね。
それだけ、ネット集客に特化しているということでしょうか?
ええ。弊社は路面店でないこともあり、いわゆる飛び込みのお客様を想定していないんです。アポなしでふらっとご来店されるお客様は、せいぜい年に1~2組程度。そんな状況で「いかにも不動産屋」という店舗レイアウトをすることに、意味を見出せなかったんですよ。
大変失礼ながら、入口も若干入りにくそうな印象を受けました…。
ですよね?実は私もそう思います。店舗は細く急な階段を上がった2階、告知は看板のみ。決して集客に有利な条件ではありません。
でも、だからこそネットを活かそうという発想にもなりましたし、逆に内装には気を遣っているんですよ。
確かに、とてもシックで落ち着いた雰囲気ですね。
風水に基づいたレイアウトなんです。
机の位置やオフィス家具の色なども、綿密に考えて設置しました。
あとはやはり、紙のものを貼り出さないことですね。これは雰囲気というより、先ほども申しましたように「必要がない」からです。
お店は2階。しかも告知物は、 なんと壁に掲示されたこの看板のみ
小洒落た上質なオフィス、 といった装いの店内
どのようなお客様が多いですか?
もともと広範囲から人気のエリアであることに加えて、弊社がネット集客に特化しているせいもあるでしょう、遠方からのお客様が多いです。また@dreamを通じてのお客様は、すでに意中の物件があってのご来店が普通ですよね?しかし最近特徴的なのは「物件はまだ決まっていないが話を聞かせて欲しい、不動産選びについて教えて欲しい」と言ってご来店される方が増えたことです。
なぜそんなお客様が増えたのですか?
おそらく、メールや電話で接する際の、私の営業スタイルのせいでしょうか。私のポリシーとして「お客様にはすべて正直に伝える」というものがあります。弊社は売買の仲介が中心ですが、私が誰のために仕事をするのかを自問したとき、買主様の立場で動きたいと思ったのです。だから、買主様にとって役立つと思えば、例えマイナスな情報でも、隠さずお伝えしてきました。
例えば、どんなことをお話するのですか?
そうですね、「この物件、弊社以外の不動産屋でも買えますよ」とか「実際、どちらで買うほうが得か」とか。他にも、仲介手数料無料のカラクリを種明かししたり、物件のマイナス面もバンバン伝えます。今まで不動産業者は、それをいかに隠してお客様に「買わせるか」ばかり考えてきました。それは結局、売主の立場で動いているからなんです。仲介手数料の面から考えても、早く高く売ったもの勝ちですから。他社さんを否定する気は毛頭ありませんが、私はそれがどうにも納得いかなかったんです。
確かに「買う」のはいいですが「買わされる」のはイヤです。
例えばネット上の物件情報においても、詳細な住所などは載せないでしょう?お客様が自分で見に行って、現地にある他社の看板などを見て、そっちに取られるのが嫌だからですよ。ですが住所を伏せたところで、ちょっとネットで調べれば簡単に場所を特定できます。他のことにしてもそう。情報を小出しにして一寸逃れをしたところで、お客様にはお見通しです。
私が言いたいのは「隠したって無駄」ということなんです。
それなら、初めから正直なほうがいいですよね。
そうですよ。売りたいがために、お客様が本当に知りたいことを隠して、もっともらしい方便を重ねてばかり。お客様は、そういうところをちゃんと見ています。だから不動産屋に対する警戒心が、いつまでたってもなくならないんですよ。…といったことも、そのままお客様にお話ししてますね。
夙川に沿って整備された遊歩道。 定番の散歩コースだ
ネット不動産の物件情報は、 詳細な地図情報付き
チラシ中心の集客に限界を感じていたそうですね。
ええ。@dream導入以前は、実にオーソドックスな「チラシ反響待ち」のスタイルでした。しかし、明らかに費用対効果は悪くなる一方。どうしたらいいか考えるものの、良いアイデアも浮かばず、完全に閉塞感を感じていました。
@dream導入のきっかけは何だったのですか?
今の場所で営業を始めたのが約4年前なんですが、当時の立ち上げメンバーの中に、元・不動産業経営者だった人物がいましてね。その彼が「実は、かつて私のお店で使っていたソフトがあるんですけど、これがすごくいいんですよ!」と教えてくれまして。それが@dreamでした。
具体的に、@dreamのどういうところに惹かれましたか?
まず、物件をデータベース化できることに感心しました。しかし、それだけなら他にも似たようなものはあります。そこで、類似のソフトを調べてみたんです。ところが、@dreamのように、ネットと連動して様々な応用ができるものは全くなかった。お世辞ではなく、とにかく「光」を感じたと言ってもいいでしょう。
操作などにはすぐ慣れましたか?
それまで私は、ネットの知識はおろか、パソコンもめったに触らないタイプでしたから、楽ではなかったです。ですが、ITサポータさんの助けもありましたし、何よりネットと@dreamに、ものすごい可能性を感じていましたからね。ワクワク感のほうがはるかに強かったです。
シンプルながら、質の良さを感じさせる 店内のオフィス家具
導入後、具体的に何が変わりましたか?
導入した他社さんもほとんどそうでしょうが、やはりチラシ時代と比べて、広告費の面・手間の面で大幅に改善されました。もちろん、問い合わせも増えましたよ。しかし、弊社にとって一番大きかったのは、やはりネットの世界に営業展開の活路を見出せたことですね。もう、革命的ですよ。経営の舵取りの方向が、完全に変わったわけですから。
ネット特化の営業スタイルは、@dreamがきっかけなのですか?
そうです。先ほど申しましたように、弊社のロケーションは決して良いものではありません。そんな現状打破のためにも「もうネットしかない!」と思いました。それに伴い、社名も現在の「ネット不動産」に変えたほどです。@dream導入以前は、ホームページさえなかったのに。
どんなホームページにすることを心がけましたか?
まず、たくさんの人が見に来てくれることです。多くのお客様がホームページに来てくれれば、その中で物件に興味を持ってくれる方もそのぶん増える、というシンプルな考え方です。逆の意見もあるでしょうが、私はそれを大事にしました。
そのために、具体的にはどんな工夫を?
当然、@dreamを使ってのSEO対策はしっかりやりました。ネットに特化するスタイルにした以上、まずは見てもらわないことには話になりませんからね。しかしそれは、あくまで土台の話。アクセス数を増やした後が大事です。使いやすさ、見やすさなども工夫しましたし、その上で、どうすればお客様からご信頼いただけるかも考えて作りましたよ。
例えばそれはどんなことですか?
チラシの延長線上のような見せ方をしないことです。もっとハッキリ言えば、しっかり情報開示をするということ。チラシのように、限られた紙面でセールスポイントばかり書き連ね「はい、買ってください」では、今までと一緒ですから。それでは、ネットで広告する意味がありません。だいたい、お客様がその物件情報をネットで見ている以上、いくら取り繕ったところで仕方ないんですよ。その場で「真実」を調べることができるんですから。
これも「正直であること」の一環なわけですね?
ええ。変にキレイに見せようとしたり、良く思われようなどとはしませんでした。例えば物件写真などは、あえて電柱や鉄塔、線路などの障害物が写りこむように撮ります。だいたい、完璧な物件などありません。お客様からすれば、少しぐらい「アラ」が見えたほうが、ご安心いただけると思います。もし物件が安いなら、安いなりの理由が分かったほうが、納得がいくというものです。
本当にお客様の立場を思って作られたのですね。
お客様に「損をした」と思わせたくない、というのがありました。もし、上辺だけ「良さそうに見せた」物件情報があったとして、お客様が電話で問い合わせをくださったとしますよね?その結果「う~ん、思ったほど良くなくてガッカリ。問い合わせただけ損をした」という気持ちにさせるのがイヤなのです。持ち上げておいて落胆させるなんて、ひどいことだと思います。
知識ゼロから、試行錯誤を繰り返して 作ったホームページ
隠したりごまかしたりせず、 ありのままを写した物件写真
メールのやり取りなどでは、何に気をつけておられますか?
まあこれも、正直であることですね。たとえ「絶対売れなさそうだな」と思う物件でも、必ずお知らせしています。もちろん、良い面・悪い面含めてね。とにかく、不動産屋っぽくないメールにすることが大事です。いかにも「買ってください」と言わんばかりの、おざなりなメールを送ったところで、ご返信はいただけませんからね。
メールはどのくらいの頻度でやりとりされるのですか?
週1で新着情報などはお伝えしますが、基本はお客様のペースに合わせています。新着情報に対しご返信がなければ、個別に内容を考えて、またメールを送りますね。ただ、強引にご来店を促すようなことはしません。ゆっくりお話を聞いて、お客様が欲しい情報を正直にお伝えしていけばいいと思っています。
時間をかけて、お客様の警戒心を解くのですね。
私はそもそも、お客様を「詰める」ことが嫌いなんです。どちらかというと、不動産業界では「詰めてナンボ」みたいなところはありますけどね。もし、見込みのお客様から断りが入ろうものなら、目の色を変えてひっくり返そうとするでしょう?私はどうもそれが…。詰めたところで、お客様は自分の意志に反したものは買いませんよ。
いい意味で、営業マンっぽくないですね。
そうなんでしょうかね?他にも、基本的に不動産の営業マンって、いつ買うか分からない方には冷たいなあと感じます。例えば、会員登録時のアンケートにおいて、「購入希望時期は3年後以降」と書かれるお客様などに対してです。そんな先の話に構っている暇はない、ということなんでしょうけど。逆に私は、そういった購入希望時期については、全く気にしません。というか、そもそもその欄を見ません。
そういうお客様にも、通常通り接するということですか?
はい。でも決して詰めませんし、急かしません。時期が来れば買ってくださると思ってますから。そうして連絡を取り合いながら、お客様のご要望に合わせて「正直な情報、不動産屋が話したがらない真実、本当にお客様が知りたいこと」をお伝えしているだけなんです。でもそのおかげで、信頼関係を築けているんだという自信もあります。せっかく@dreamのおかげで効果的な集客ができているのですから、ちゃんと活かしたいですしね。
広告的資料は一切掲示がない店内。 ネット集客に特化しているからだ
@dreamを導入したことで、何が一番良かったと思いますか?
社名が変わったり、ネットに活路が見えたりといったこともありますが、効果として最も顕著に感じたのは「勝手に売れて行く」という感じがすることです。もちろん、色々な工夫の成果もあってのことでしょうが、かつて出口の見えない努力をしていた頃とは、明らかに感覚が違いますね。
勝手に売れるって、すごいことですよね!?
まず@dreamでお客様に集まっていただき、あせらず大事に接する。あとは、ある程度人数が集まってきたり、時期が来たりすれば、勝手に売れて行くんですよね。表現は適切でないかもしれませんが、種をまいて水をやっていれば、確実に多くの実が収穫できる…そんな感覚です。
さりげなく置かれたデザイン家具の椅子が、アート素材として店内に彩りを添えている
ネットの存在は、今後の不動産業にどう影響するでしょう?
ネットが発達する以前、不動産の物件情報は不動産屋さんで得るのが常識でした。そういう意味では不動産屋さん、特に仲介業の「商品」とは、土地や建物そのものと言うよりも、どこにどんな物件があるのかを知っている「情報」ではなかったかと思うのです。ですが、ネットの発達により、今や情報自体はタダ同然。お客様は、特定の不動産屋に頼らずとも、家にいながらにして情報を手に入れることができるようになりました。
すると、何が今後の不動産屋さんに求められるのでしょうか?
サービスです。不動産仲介業は、サービス業たる原点に帰るのです。この動きは、業界全体を変える潮流になるかもしれません。まさに常識を覆すような発想転換、つまりパラダイムシフトの時期に来ているのではないでしょうか。それに気付いた業者が、これからのネット時代を生き残れると思っています。そんななか、私が提供できるサービスが、正直であることだったのです。
それらをふまえ、これからの@dreamユーザーさんに助言を。
少し話が大きくなりましたが、まずは模倣からで十分だと思います。成功しているユーザーさんのホームページをマネることから始めてみてください。また、検索ワードの選び方とかも参考にしてみるといいと思います。
最後に、これからの目標や展望をお聞かせください。
まず、ネット界の不動産がどうなっていくのか、自分でもいろいろ検証してみたいですね。やりたいことが山積みですから。また、業界全体を見ても、矛盾や悪い慣例がまだまだたくさんあります。そういったものと一線を引いたお店にしていきたいですね。
西宮市内の高台から街と海を臨む。 美しい街並みも、愛され続ける理由
会社名 | ネット不動産株式会社 |
---|---|
住所 | 〒662-0961 兵庫県西宮市御茶家所町4-15-2F |
TEL | 0798-37-0098 |
FAX | 0798-37-0097 |
お問合せ先 | info@net2103.jp |
公式サイト | http://www.net2103.jp/ |
インタビューを終えて
まさに、規格外の正直さ。
常識にとらわれない、古賀社長の自由な発想には頭が下がるばかりです。
しかし、そもそも「常識」とは何なのか。
私たちは「常識」という都合のいい言葉にあぐらをかいて、お客様を食い物にしたりしてはいないか。
そもそも誰のための、何のための不動産屋さんなのか…
そんな、商売の本質を思い起こさせてくれるような取材でした。
「不動産業はサービス業だ」と言い切った古賀社長の言葉に、これからの、そして原点の不動産屋さんのあり方を見た気がします。
「そんな甘い考えで、モノが売れるか!」、「キレイごとで仕事はできない!」、そんな意見もあります。でもそれって、本当にそうなんでしょうか・・・
あなたも、ちょっとだけ考えてみませんか?
(取材、撮影、編集、文章 : 物語ライティング )