製品導入事例/バックナンバー
第76回は、東京都町田市の「株式会社かりん不動産」様です。
店舗のある鶴川は新宿まで30分と利便性抜群ながら、緑が多くのどかで風がゆっくり流れる町です。
「新百合ヶ丘に代表される川崎市麻生区が人気ですが、隣接する鶴川には一般的な30代の方の手が届くお得な物件がたくさんあります」そうおっしゃる渡部社長も10年来、こちらにお住まいです。
不動産業界、特に売買専門業者は「100人規模の会合でも女性は1人か2人」というほどの男性社会。そんななかで、女性ならではの視点を生かし不動産業界に新風を巻き起こす意気込みの渡部社長に、さまざまおうかがいしました。
株式会社かりん不動産
代表取締役 渡部 里花 様
公式サイト | http://e-karin.com/ |
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所在地 |
小田急線鶴川駅より徒歩18分 地図はこちら |
取材日 | 2012年6月14日 |
以前はブライダルの司会をされていたそうですが。
22歳から、結婚、出産などありましたが、ずっと続けてきました。毎日フルタイムではありませんし、自分でスケジュール管理できるので子供の運動会などは参加できましたが、春と秋の土日はほとんど仕事でしたね。
不動産業とのご縁はいつ?
6年くらい前でしょうか、大規模分譲のマンションギャラリーでお客様を案内する仕事に就きました。そこで「住まいっておもしろい」と思ったんです。その後、大手売主物件の営業職を経て、仲介業に入りました。
それまでとは別世界ですね。
そうですね。でも以前から、自分が持っているブライダルでの経験やカラーコーディネーターの知識などを融合した何かで独立したいと思っていて、「その中心は不動産だ」と確信したんです。
だから独立するための一歩として、仲介業者にお世話になりました。そこで10カ月足らず、一通りの業務を経験させていただきました。
本当はもっとそちらにいて、開業資金をためてから独立するのが理想だったのですが。まわりには早すぎると映ったのでしょう。「見切り発車だ」「怖いもの知らずだからできるんだ」などと言われましたよ。
緑が多い小田急線鶴川駅前
仲介業経験10カ月で独立されたんですか?
そうなんです。その仲介業者は旧態依然としたところがあり、私はよく上司とぶつかっていました。
その頃、金丸社長のブログ「黄色いバックドロップ」と出会って、「この方法なら私の思い描く不動産業ができるかも」と思ったんです。
ゼロからの成功例にも勇気をいただきました。みなさんのおっしゃる通り、見切り発車ですね。
では、@dreamと出会わなかったら…?
何らかの方法で独立したと思いますが、もう少し時間がかかったかもしれませんね。どう融合させればいいか、方向性から考えなければならなかったでしょうし。とにかく「@dreamありき」での開業です。
それにしても、すごい勇気ですね。
はい、よく言われます(笑)。
当時、この地区で@dreamを使っている業者は少ない印象でした。
メール追客でしつこい営業をせず、女性がやわらかく丁寧に接客したら…。
ほかの業界では普通のことを普通にサービスするだけなのですが、それが差別化になるのではと考えたんです。それも開業の後押しになりました。
店先でチラシを携えお出迎え。
「うちのトレードマークです」
「かりん不動産」ってかわいい社名ですね。由来を教えてください。
カリンの実は甘い香がしておいしそうですが、生では硬くて食べられません。
でもはちみつやお酒に漬けると、喉にいいエキスがたっぷり出ますよね。そんな見た目ではわからないしっかりした芯を持ち有効成分豊富なカリンと、私たち女性ばかりの「かりん不動産」も似たイメージではないかと。
私たちはやわらかそうに見えても、内面は強くて効能もたくさんあるんです。
お店もステキですね。看板を見ない限り、不動産屋さんだとわからないのでは?
本当はもっと広いところにテーブルセットもたくさん置いて、ネットカフェのような空間にしたいんです。
テーブルには1台ずつパソコンがあって、自由に使っていただける。
お客様はふらりと来てお茶やケーキを食べながら、物件を探したりネットサーフィンしたり。ご質問など呼ばれたときだけ、奥にいるスタッフが出てくる。そんなカフェ不動産にしたいんです。
今までにないスタイルですね。開業当初から、このお店を構えられたのですか?
いえ、最初はマンションの1室を借り、私1人で@dreamの入力をしていました。@dreamってステップが明確ですよね。「この段階まで進まないとお客様は来ない」とわかっていたからこそ我慢して、基本に忠実にやってきました。
@dream的には今でも10段階の2か3くらいですが、2011年2月にこのお店をオープンして、今は女性3人でがんばってます。
お店がこちらに移ってから、何か変化はありますか?
同業者の方には、お店より物件確認電話で認知していただけたようです。「あんなに毎日確認するなんて、相当お客様が多いのか?」と思っていただいたようで…。
お客様や地域の方とはこちらに看板を出し店を構えることで、少しずつつながりができてきました。50代以上の方や若くてもスマートフォンだけの方などネット上の発信をご存知ない方ともおつきあいできるのはうれしいですね。
「いつも通る道だから」「近くの歯医者の帰りに」と寄ってくださったり、お客様からおすそ分けいただいたり。実は、このソファも、表にある白いベンチも、アジサイも、ドールハウスもいただきものなんですよ。
最近、商店会に入れていただき、もっと地域密着でいこうと決意したところです。
シックでおしゃれな接客スペース。
「赤ちゃんが多いので大きなソファは必須」だそう
「手作り感満載」のホームページ。
「更新しても、更新しても、また更新の日々です」
@dreamの希望条件登録は順調に伸びていますか?
それが、まだまだ少なくて……試行錯誤しているのですが、課題ですね。
ただ、ホームページやブログを見てくださっている方は、たくさんいらっしゃるようなんです。普段は見えないし、手ごたえがないんですけど。
条件登録のない方から突然、お電話いただいて現地にご案内することもよくあって、そこで「いつも見てます」って。こちらは初めてですが、お客様は私たちのことをよくご存知で、ありがたいです。
ネットでの発信が、リアルな反応として返ってくるんですね。
はい。先日も、あるお客様からメールをいただきました。
希望条件をご登録いただいてから約半年間、新着情報や価格変更のメールを送ってもまったく反応のない方で、初めての返信でした。そこには
「自分たちなりに懸命に探して、思い通りの物件に巡り合えました。かりん不動産からの情報で相場観もわかり、とても役に立ちました。ありがとう」
と書かれていたんです。結果的に他社で決められたのですが、丁寧に知らせてくださったことがうれしくて。
こちらからの発信を受け取ってもらえて、少しでもお役に立てた。方向性は間違っていないと意を強くしました。ご成約はいただけませんでしたが(笑)。
メールやブログの力は大きいですね。
そうですね。
@dreamの更新はほとんど2人が担当してくれていますが、ブログやツイッター、Facebookなどどれも大変で。メールも本当は苦手なんですよ。
でも3人でなんとかがんばっているおかげで、初対面でもすぐ、フレンドリーな関係になれますね。
土地をご案内する時、私は物件のイメージを話すんです。
「こちらが南です。南から北に風が吹いて、リビングの窓はここにあるといいですね。ここが玄関だと、駐車場があのあたりで、あそこは庭にしましょうか。庭には木があって…」って。
お客様とそんな妄想で盛り上がって楽しいです。
ご近所情報も主婦目線ですから「あのスーパーは○曜日が安い」「無人の無農薬野菜販売所がある」「あそこの御隠居さんはとっても頼りになる」なんてことまで、知ってることは全部お伝えします。お会いしてからの情報提供もすごいんです。
楽しいご案内ですね。お客様のようすはいかがですか?
たいていのお客様は、すでに3~4社とお付き合いがあります。いろんな不動産業者さんが一生懸命、物件紹介などされていますから、お客様は何でもよくご存知です。
一部の業者さんは、いわゆる片手物件より両手物件を勧められるそうですが、私たちには関係ありません。私たちは不動産初心者ですから、しがらみも癒着もありません。お客様のお話をよく聞いて、ご希望に添える物件ならそれでいいんです。
実際、ほとんどの物件はどの業者からでも買えますよね。お客様には「どこから買うか」も大切だとお話して、あとはゆっくりご自宅で考えていただければと思っています。
人気の新百合ヶ丘駅。
ロータリーをぐるっと商業施設が取り囲む
女性3人で切り盛りされていますが、メリットとデメリットを教えてください。
どこに行ってもまわりには男性しかいないので、まず女性だというだけで目立ちます。足元を見られ怖い思いをしたこともありましたが、メリットの方が大きいですね。
よその業者さんに連絡したとき「担当者がいないからわからない」とよく言われますが、うちでは誰が電話を受けても、そのお客様がどんな物件をお探しで今はどの段階かなどすべてわかっています。おばちゃんはおしゃべりですから、情報共有は得意なんです。
今後は社員を増やしたいし、女性に限定しているわけでもありません。ただ社員が増えても、みんなで情報を共有して協力して成約までサポートし合う体制でありたいと思っています。
私も同世代のおばちゃんですが、おしゃべりは武器ですね。
たとえば売り物件をお預かりすることになっても、いろいろお聞きするんです。「なぜ売りたいのか」「いままでどこに愛着を持っていたのか」など、売主さんにはたくさん思いがあります。そういう気持ちをわかってくださる方に買っていただきたいじゃないですか。
実際に売買が成立した後も、売主さんが近くに来られたときふらっと会いに行かれたり、買主さんがご近所のことを売主さんに相談されていたり、そういう関係って理想でしょ。その仲立ちをするのが不動産屋だと思うんです。家を介して、人と人を結びつける仲人のようなものです。
「よかった、いい人に買ってもらえた」「いい人から売ってもらった」そういう出会いを仲介できたときが、この仕事のいちばんうれしい瞬間です。
売主さんと買主さんの関係について、初めて考えました。
通常、2回しか会わないんですよ。でもそれまでに私がうかがったことをお伝えしておきますから。
不動産物件ってただの箱ではなく、そこに人が住んでいろんな思いが詰まっています。それを全部なかったことにするのではなく、少し引き継いでもらえたらうれしいですよね。
それに、いい関係ができると価格交渉もしやすいんですよ。「そんないい人なら、少し下げてもいいか」って。
渡部社長は、お客様の希望や思いを引き出すのがお上手ですね。
ブライダルでの経験が生きているのかもしれません。
以前、「家の中がいっぱいだから住み替えたい」とご夫婦で来店されたお客様がいらっしゃいました。よくよく聞いてみると、お住まいは間取りも広くて収納もそこそこあるんです。
もっと突っ込んで、趣味の話やどんなものがあるのかなどお聞きしているうちに「もっと大きな家を探すより、今の家を片付けて住みやすくしましょう」という結論に至り、整理収納アドバイザーをご紹介しました。
「スッキリ片付いたし、引越せずに済んだ」と特にご主人にたいへん喜んでいただきました。
「お客様サイドに立つ」とはそういうことなんだと思います。この姿勢を貫けば成果はあとからついてくる。それが私たちの経験値をカバーしてくれると信じています。
社長は外回り、社内事務は2人が担当。
自身も子どもも同世代、住宅ローンの苦労も同じ
これからの夢を教えてください。
ご成約いただいたお客様にはオリーブの木をプレゼントしているのですが、それを依頼している園芸業者さんや細やかな対応の司法書士さん、さきほどお話した整理収納アドバイザーなど、私のまわりには能力のある女性がたくさんいます。
そんなみなさんのネットワークを作りたいんです。家のクリーニングやリフォーム、手土産用のお菓子を作ってくれる方、お年寄りに食事やお花を届けたり子育ての相談にのったり、「家」を中心にたくさんのサービスが考えられます。それらを望んでいる方に、「かりんネットワーク」から安心な人材を紹介する。そこでも仲人ができたらいいなと。
才能ある女性、たくさんいますよね。
そうなんです。私たちの年代は子育ても一段落して、これからが長いんですよ。でも、ブランクがあって簡単には就職できない。才能が埋もれてしまうのはもったいないと思うんです。だからみんなでゆるくつながって、オファーがあったときにお仕事していただき、報酬をお支払いしたいんです。
中心に「家」があり、人の営みがあり、そこに必要なものは無限にあります。つながる人も無限です。どんどん妄想の域に近づくのですが、ワクワクしませんか。
やっぱり「住まいはおもしろい」。わたしの夢は不動産屋だけでは終わらないんです。
店舗奥のワークスペース。
ここから新しい情報を発信する
会社名 | 株式会社 かりん不動産 |
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住所 | 〒195-0071 東京都町田市金井町1700-1 セゾン鶴川1階 |
TEL | 042-708-8375 |
FAX | 042-708-8374 |
お問合せ先 | info@e-karin.co.jp |
公式サイト | http://e-karin.com/ |
インタビューを終えて
やわらかい笑顔、明るい声、渡部社長はまさにかわいい女性の代表です。でも、お話を聞くに従って、印象が変わってきました。芯の強さが見えてきて、甘く香っても生では硬くて食べられない「かりんの実」そっくり。社名の由来に納得です。
「不動産はただの箱=物件ではなく、たくさんの思いのかたまり」それを実践されるのは大変だと思います。「だから女性は甘い」「そんなチンタラしていたら大きな商売はできない」中傷の声が聞こえてきそうです。
でも、きっとにこやかにほほ笑みながら、ご自身の思いを貫かれることでしょう。その先には新しい仲人のような不動産業が見えてくることと思います。
かりんネットワークも魅力的ですね。私もぜひ仲間に入れてください。これからの渡部社長に大注目です。
(取材、撮影、編集、文章 : 物語ライティング )