不動産紹介ビジネス

 

 

昨年の6月に唐突に出た記事でしたが、経済産業省が「宅地建物取引業」の
免許を持たない個人や法人が不動産業者へ顧客を紹介した際に、
手数料を受け取る行為を「合法である」という認定をしました。

 

宅地建物取引業(宅建業)の免許を持たない個人や法人が、
不動産会社に顧客を紹介した時に手数料を受け取る行為に対して、
経済産業省が6月15日、合法と認める発表を行った。 

経産省の担当者は「顧客へ物件情報を紹介する場合、不動産取引を媒介する
行為となるが、業者を紹介するだけであれば仲介行為に当たらない。
個人でも法人でも違法性がないことには変わりはない」とコメントしている。 

 

宅建免許ない紹介ビジネスに合法認定~全国賃貸住宅新聞

 

この行為を繰り返し利益目的で行っても良いそうです。

 

あくまでも顧客を不動産業者へ送客する行為に対してということですが、
物件の紹介は媒介行為にあたるが、不動産業者の紹介だけなら媒介行為に
当たらないということになります。不動産紹介業とでも言いましょうか。

 

また昨年12月には、契約の場に顧客を紹介した事業者が立ち会って契約成立時に
手数料を受け取る行為に対しても、物件の説明、契約成立に向けた取引条件の
交渉調整の行為は顧客と不動産業者で直接行い、事業者が一切関与しないことから、
「宅地建物取引業」には該当しないという見解も出されています。

 

この認定・見解は規制を所管している国土交通省の確認を得て、
経済産業省から出されたもので、狙いは「新たなサービスの創出及び拡大」だそうですが、
免許を持たなくても、不動産に関わるビジネス(紹介)が出来ることで、
異業種からの新規参入をさらに促し、業態の活性化をはかりたいという事です。

 

不動産会社へ顧客を送客し得る事業者はビジネスチャンスを探っていることでしょう。
(この辺りは今後別のテーマで深く考えてみたいと思います。)

 

しかし免許を持つ不動産業者はルールに基づいて契約に至るプロセスを踏むのに対し、
紹介事業者のルールはとても曖昧に見えます。

 

業界が活性化するのは良いことですし、顧客を送客してくれる窓口が増え、
実需に繋がるのであれば尚、良いことですが、今よりも透明性に欠ける取引が増え、
専業で窓口を行う悪質な事業者が現れる可能性も否定できません。

 

 

どんな業界でも、新規の獲得が難しい時代に突入する中で、
商品で差別化できなくなれば、選ばれる会社になるしかありません。

 

差をつけるのは“評判”と“信頼感”。

 

これからの時代は正しい情報を配信し、信頼される対応をすることの重要度が
さらに増すことになると強く感じます。ますます意識していきたいですね。

 

 

2017年10月「IT重説」が本格運用開始

 

一昨年あたり業界紙の一面記事に良く取り上げられていた『IT重説』。

 

IT重説というのは、WEBのインフラを利用し、オンラインシステム(テレビ電話など)
を用いて、宅地建物取引士による「非対面」での説明を認めるというもの。
2015年から実施された2年の社会実験期間を経て、今年の10月を目途に
賃貸借契約における借主への重要事項説明について運用開始となるようです。

 

IT重説も政府の成長戦略の一環として進められる規制緩和策のひとつ。
市場の活性化を図る事を目的としていて、旧泰然とした手法に囚われている業者が
まだまだ多い不動産業界に新たな風を入れるきっかけとなる可能性があります。

 

地理的な制約に縛られず重説を受けられるようになることで取引がスムーズ化し、
顧客の利便性(時間もお金も)が大幅に向上することが期待されます。
また不動産会社も週末などに集中していた取引業務が分散できる可能性が生まれます。

 

ですからIT重説自体は悪い話ではないのですが、ガイドラインの策定が、
『貸主』『借主』といった消費者保護の観点からしっかり整備されることが必要です。

 

2015年8月~17年1月末までに行われた登録事業者のみが参加した社会実験では
賃貸仲介については目立ったトラブルが発生しなかったとのことですが、
実際のIT重説解禁後、内見をせずに契約が行われることが多発するなど
トラブルは起きないのでしょうか? 少なくとも内見に携わった業者が
IT重説を行うことが、借主・貸主にとっての安心に繋がるはずです。

 

今回のIT重説の推進は、不動産業界の既存権益に対し、顧客の利便性向上をネタに
IT業界が切り込む構図となっており、“利便性の向上”に目を向けた
議論が中心で“質”を問うことが抜けています。

 

大手が先行して対応を始めるでしょうから、多少波風は立つかもしれませんね。

 

確かにインフラの進化とともに業態も変化していくものです。
しかし、人と人が深く介在するこの不動産業の場合は最後は手を抜かず、
信頼のおける“人”が顧客に支持されるという事実は変わらないのでは無いでしょうか。

 

やはり、いつも原点回帰ですね。