2017年10月「IT重説」が本格運用開始

 

一昨年あたり業界紙の一面記事に良く取り上げられていた『IT重説』。

 

IT重説というのは、WEBのインフラを利用し、オンラインシステム(テレビ電話など)
を用いて、宅地建物取引士による「非対面」での説明を認めるというもの。
2015年から実施された2年の社会実験期間を経て、今年の10月を目途に
賃貸借契約における借主への重要事項説明について運用開始となるようです。

 

IT重説も政府の成長戦略の一環として進められる規制緩和策のひとつ。
市場の活性化を図る事を目的としていて、旧泰然とした手法に囚われている業者が
まだまだ多い不動産業界に新たな風を入れるきっかけとなる可能性があります。

 

地理的な制約に縛られず重説を受けられるようになることで取引がスムーズ化し、
顧客の利便性(時間もお金も)が大幅に向上することが期待されます。
また不動産会社も週末などに集中していた取引業務が分散できる可能性が生まれます。

 

ですからIT重説自体は悪い話ではないのですが、ガイドラインの策定が、
『貸主』『借主』といった消費者保護の観点からしっかり整備されることが必要です。

 

2015年8月~17年1月末までに行われた登録事業者のみが参加した社会実験では
賃貸仲介については目立ったトラブルが発生しなかったとのことですが、
実際のIT重説解禁後、内見をせずに契約が行われることが多発するなど
トラブルは起きないのでしょうか? 少なくとも内見に携わった業者が
IT重説を行うことが、借主・貸主にとっての安心に繋がるはずです。

 

今回のIT重説の推進は、不動産業界の既存権益に対し、顧客の利便性向上をネタに
IT業界が切り込む構図となっており、“利便性の向上”に目を向けた
議論が中心で“質”を問うことが抜けています。

 

大手が先行して対応を始めるでしょうから、多少波風は立つかもしれませんね。

 

確かにインフラの進化とともに業態も変化していくものです。
しかし、人と人が深く介在するこの不動産業の場合は最後は手を抜かず、
信頼のおける“人”が顧客に支持されるという事実は変わらないのでは無いでしょうか。

 

やはり、いつも原点回帰ですね。